学生時代、テスト前になると、「あー、昨日全然勉強できなかったよー」などと言う人が周りにいませんでしたか?
組手稽古前、「今日は○○を怪我していて~」と訴えてくる子供達はいませんか?
勉強してないアピールをしてからテストに臨むその行為には「セルフ・ハンディキャッピング」という名前がついています。セルフハンディキャッピングには、
① 獲得的セルフハンディキャッピング
② 主張的ハンディキャッピング
という二種類があります。
前者は、何か困難に立ち向かうにあたり、あらかじめ自分にハンデを背負わせる行為で、後者はできない言い訳を先に周囲に話すことで周りからの期待をさげる行為です。
どちらも自分自身の能力に関するイメージを守るという自己防衛反応です。
先に言い訳をしておけば、万一出来なくても自分のプライドは守られ、成功すれば「困難な状況なのにできちゃった自分」に満足できます。
そのどちらも、自分の自尊心を守るための行為です。
残念なことに、この「セルフハンディキャッピング」は、日本の文化と相性が良いそうで、謙虚な姿勢が美しいとされがちな日本では、なかなか「物凄く自信があります!任せてください!」などと宣言する人は多くはないかもしれません。
しかし、セルフハンディキャッピングには、自分の自尊心は守ることかできても他者からは良い印象を持たれないというデメリットがあります。さらに向上心が減ってしまいますし、自己防衛が主になるため、成功する確率も減ってしまいます。
大谷選手がWBCの時に言った「憧れるのをやめましょう」と言う言葉はまさにここにつながります。
対戦相手は「自分がずっと憧れてきた凄い選手達」という思いが心にあると、それだけで無意識にも受け身で試合をすることになってしまいます。本気で勝ちにいくためには、そういう思いは忘れなければならないということです。
何の言い訳も用意せず、全力で練習して負けてしまったら、それはそれは悔しいものです。非常に傷つきます。本気でやった分大きく凹みます。もちろん僕にも経験があります。しかし、そこから学ぶ事があり、また次の目標ができます。谷底に落ちて一時凹むところまで凹んだら、また登り始めれば良いではないでしょうか。
ただ、そのためには、心の強さが必要です。
僕はこの心の強さは「強靭」というより「柔軟」という認識です。
自分で自分を信じられる気持ちがあって、失敗は悪いことではないんだという事を無意識でもわかっている事が必要だと思います。ここにも自己肯定感が高いということが必要です。
ということは、幼少期からの生活の中で育むことが大切だと考えられます。
安心できる居場所があって、さらに自分は愛されているという思いを持っている事がまずは一番です。そしてそのうえで、
例えば空手であれば、
・昇級試験で一つ級が上がり、帯色が変わっていくという成功体験を重ねていったり
・試合で負けた時は「なぜ負けたのか、どうしたら勝てるのか」を考えて弱点を克服する事に頭を切り替えるくせをつけて欲しい
ここで保護者の皆様にお願い!
衝動的感情のまま、叱ったり、怒鳴ったり、ぶっ叩く等は止めましょう。
試合後のインタビューをうける坂田選手に前田明が行ったような行動を再現するのはナンセンスです。
蹴りや突きが様になってきたり出来なかった技ができるようになったりしたら、一緒に喜んであげて欲しいです。
人の邪魔をしたり人を傷つけたりした場合や努力しないことはしっかり叱り、人のためにした行動や一生懸命な努力は褒めます。また、出かける準備は子供にさせるようにして欲しいと思います。小さな事ですが、信頼して任せるということは大切な事ですし、後々親御さんも楽だと思います!
失敗して悔しがるのは大いにけっこうで全力で悔しがって欲しいですが、失敗を恥ずかしいと思うようにはなってほしくないと思います。
自尊心の防御のための言い訳作りのために全力で臨むことを回避するのは可能性を潰してしまうのでもったいないですし、言い訳を先に大声で言ってまわるのは周りからウザいと思われてしまいます。
これは大人でも同じです。
失敗しても言い訳などせず、それを受け入れて、また前を向ける強さを日々の稽古の中で育んでいきましょう。
追記
同窓会の際、美しさを保っている女性が「え~、何もしてないよ~」などと言う人、いませんでしたか?
あれ、絶対に嘘ですよねw
あれ、絶対に嘘ですよねw